「相続の準備は必要だと思う。でも、通帳の残高や財産の中身を家族に全部話すのは気が進まない」
そのように感じて、準備を先延ばしにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
相続の準備は、財産の金額を今すぐ家族全員へ伝えることだけではありません。ご本人のプライバシーを守りながら、「必要なときに、必要な情報へたどり着ける状態」をつくることも大切な準備です。
今回は、金額を家族へ全部開示しなくても始められる整理の方法をご紹介します。
1. 今は伝えないことを、自分で決める
まず、「どこまでなら伝えられるか」をご本人が決めます。
例えば、次のように分けて考えられます。
- 今から家族へ共有してよいこと
- 特定の一人だけに伝えておきたいこと
- 体調が変わったときに伝えてほしいこと
- 今は誰にも伝えず、自分で保管しておきたいこと
家族のための準備であっても、ご本人の気持ちを置き去りにする必要はありません。「全部話すか、何も話さないか」の二つに分けず、共有する範囲と時期を選びましょう。
2. 金額ではなく「種類と保管場所」を整理する
次に、金額を書かず、どのような財産や関係書類があり、どこを確認すればよいかを一覧にします。
例えば、次のような項目です。
- 預貯金を利用している金融機関名
- 生命保険などの契約書類の保管場所
- 自宅、土地、賃貸物件などの関係書類
- 借入れや保証に関する書類の有無
- 遺言書やエンディングノートを保管している場所
- 相談している専門家や担当窓口
大切なのは、正確な金額を並べることよりも、存在そのものが見落とされないようにすることです。暗証番号やインターネットサービスのパスワードは、この一覧へ直接書かず、別の安全な方法で管理します。
3. 誰が、いつ、その一覧を確認できるか決める
一覧を作っても、誰にも存在が知られていなければ、必要なときに見つけてもらえないことがあります。
そこで、信頼できる人に「書類を保管している場所」だけを伝える方法があります。伝える際は、次の点も一緒に決めておくと安心です。
- 誰に保管場所を伝えるか
- どのようなときに確認してよいか
- 他の家族へ共有する前に、誰へ相談してほしいか
- 一覧の内容を更新したとき、誰へ知らせるか
一人にすべてを任せることが心配な場合は、「保管場所を知る人」と「内容を確認する際に同席する人」を分けることも考えられます。家族の関係やご本人の希望に合う形を選びましょう。
4. 暮らしの変化に合わせて見直す
財産や家族の状況は変わります。一度作った一覧を、そのままにしないことも大切です。
例えば、住まいを変えたとき、口座や保険を整理したとき、家族の役割が変わったときなどに見直します。すべてを作り直すのが負担なら、年に一度、保管場所と連絡先だけを確かめる方法でも構いません。
見直す際には、「今もこの人へ伝えてよいか」「共有したい範囲は変わっていないか」も、ご本人の意思として確認します。
まとめ―全部を話す前に、情報が途切れない準備を
相続の準備は、財産を今すぐ家族へ全部伝えることから始めなくても構いません。
まずは、
- 今は伝えないことを自分で決める
- 財産や書類の種類と保管場所を整理する
- 誰が、いつ確認できるか決める
- 暮らしの変化に合わせて見直す
という順番で、無理のない範囲から始めてみてください。
ご本人のプライバシーを守ることと、家族が将来困らないように備えることは、どちらか一方を諦めなければならないものではありません。まずは一枚のメモをつくり、「必要な情報へたどり着ける状態」を残すことが最初の一歩になります。
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行政書士 沖縄相続法務事務所・エボルバ沖縄
棚原 良太